復興のために企業がメッセージングしなければならないこと− 911の際の米国事例

◇911テロリズムへの凛とした闘い:米国トリビュート広告

2001年9月11日、朝、テレビをつけると、異様に興奮したアナウンサーの声と騒音がリビングに響き渡り、一瞬にしてそれは唯事ではないことが起きたと察知できた。ちょうど2機目のボーイングが煙のたつワールドトレードセンタービルに直撃するのがリアルタイムで映っていた。一瞬、映画のトレイラーでも見ているのかと錯覚しそうになったが、次の瞬間、人が逃げているリアルな実況だと分かった途端、背筋がゾーっとしてテレビの前に立ちすくんだことをよく覚えている。

2機目が突入した時、人々はそれが単なる飛行機事故ではなく、明らかにアメリカが攻撃されていることを理解した。その映像は繰り返し流れ、感情的な現場のレポーターによって、より激しくパニック状況が伝えられた。その惨事は目を覆うばかりで、正確な事実がレポートされるまで少し時間がかかった。だんだん意味が分かるようになって来た頃、私は大学時代の友人の一人が106階で命を落としたことを知り、涙した。

アメリカ企業は、この歴史的なトラジェディの被害者をどのように悼み、どのように復興をサポートしたのか? 今回の、私の故郷を含む東北を襲った大震災とは違い、テロは確実に人災である。しかしながら、多くの被害者が存在し、精神的なストレスが増大し、多くの金銭的かつ精神的なサポートが必要であるという点において、911以降のアメリカ企業の活動を学習するのは妥当な機会である。

アメリカ国民はこの攻撃を「自由への挑戦」だと捉えた。そのため、自由を守る=愛国心を煽る報道が毎日のように続いた。企業のハードセルのTVコマーシャルは自粛へと向かったが、人々をサポートする企業活動そのものが自粛に向かうことはなかった。その約4ヶ月後のスーパーボール(アメリカで最もTVCM枠が高く人々の注目が集まるスポーツイベント)では、バドワイザーがTribute広告(追悼広告)を打った。


事例1:Budweiser(バドワイザー・ビール)一日だけの911追悼TVCM

“自由の女神”がその象徴となるアメリカ。ニューヨークマンハッタンに向かって、高くそびえる自由の女神がいまも海をみて涙ぐんでいるようにみえる。多くの移民がこの島から入国審査を受けて、大国家
アメリカ合衆国に移り住んだ。その長い歴史を刻む島。その自由の女神に向かう多くの馬の連隊。砂漠を抜け、鉄橋を渡り、山々を駆け抜け、12頭の馬達は颯爽と馬車を走らせる。ゴールであるニューヨークに着くと、ビル街の遠くにそびえる自由の女神像に向かって、一斉に脚を折り、礼儀正しく辞儀をする。

これが911テロ後に一回だけオンエアされたバドワイザーによるTribute(追悼)企業広告で、パノラミックでダイナミックな映画のような画像だ。この馬は、バドバイザーの象徴として毎年使われているものだが、フリーダムのために戦った勇敢な戦士たちの象徴でもある。

これはアメリカの企業活動の好例である。精神的なサポートを必要としている国民に対し、企業ができることを示唆している。コピーもメッセージもないパトリオティックでエモーショナルなコマーシャルだが、つらい心を癒し、自由の精神を取り戻す勇気をバドワイザーは与えた。

ワイズアンドパートナーズ ブランドマーケティング・ディレクター 結城彩子
(宣伝会議5月1日号に一部寄稿)

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