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米国マーケティングトレンド研究会 2011.08.11

大災害直後に企業が行う最重要なサポートは何か?- 911以降の米国事例

大災害直後に企業が行う最重要なサポートは何か?- 911以降の米国事例

アメリカの企業は、特に911以降、社会貢献活動を会社の活動に組み込み、利益を追求する以上の組織にしようと考えている。そのため、自国、他国で起こる さまざまな災害に対し、沈黙していることはなく、すぐさま企業やブランドとしてどういったサポートができるか考えるシステムが構築されている。
次の事例は、94年のハリケーン・カトリーナと昨年のハイチ震災の時のものである。

◇ハリケーン・カトリーナ2005 & ハイチ大地震救済2010
− P&G Tide “Load of Hope” キャンペーン

惨事が起こったとき、震災で多くの人が苦しんでいるとき、企業は何をサポートすべきか? これは、企業のミッションやブランドのもつ崇高なベネフィットを明確に規定している企業ほど、活動がぶれず、意義があるものとして市民の目には映る。
P&Gはコーズマーケティングのお手本とも言えるケースをたくさん実現してきた企業として有名だが、中でも洗濯洗剤ブランドのTideが貢献した”Load of Hope”活動は、アメリカ国内だけでなくハイチや他の地域にも社会奉仕として展開されている。
2005年のニューオリンズを襲ったハリケーン・カトリーナの被災地は、町中が爆風にふきとばされ、少なくとも1836人が命を失い、8億円を超えるプロパティの損害を被った。長い避難生活で最も不便なことの一つが洗濯である。電気や水などライフラインの崩壊した場所では“衣服を洗って清潔にする”というもっとも基本的な機能を失い、途方に暮れていたに違いない。そこで Tide(洗濯洗剤)は、自分たちがやるべきことをすぐさま行動に移した。
Load of Hope = 希望を搭載したタイドブランドのランドリートラックが誕生。英語で「洗濯何回分」をone load、two loadというように勘定するが、それと「搭載した=load 」をダブルミーニングにしたマーケティングネームは冴えている。Tideの社会的使命として、まず移動型のランドリートラックを作り、32機の洗濯機と乾燥機を搭載し、被災地のあちこちに出向き、一日300回分の避難民のランドリーを提供するに至った。
このようなLoad of Hope の社会貢献が効を奏して、Tideキャンペ−ンは認知をあげ、その後もアメリカ国内の多くの地域のハリケーンや災害後の被災者の生活を助け、昨年1月にハイチで起こった大地震の際も、いちはやく現地にトラックを運び、ライフラインのとだえたインフラ無き土地で希望をつなぎ、現在もさまざまな救済サポートが続いている。
 
◇Coca Cola Odwalla Juice
– “Haiti Hope”プロジェクトとハイチ震災リリーフ2010

Odwallaスムージーは、コカコーラ社から出ているフルーツジュースのブランドだが、大震災後すぐにオドゥアラ・ハイチホープ、マンゴ-ライムエイドという救済活動を開始した。
最近になって再び「ハイチホープのマンゴタンゴ味を買うと、1ボトルにつき10セントをHaiti HopeProjectに寄付する」という新しい活動を追加した。Haiti Hope Projectは5年間の長期コミットメントを約束し、ビジネス、マルチラテラル開発、そして市民社会と協力しあって、9億5千万円ほどの投資により、ハイチのマンゴ農家とその家族に職を与え教育していくために尽力して行く予定である。ゴールは2万5000件のマンゴ農家の収入を二倍にし、長期的に国の復興に寄与したいと考えているようだ。
 
◇ノーリツアメリカ – “Run for Relief for Hurricane Katrina

私が自社の仕事として、アメリカで行ったコーポレートブランドのCSR事例として、ノーリツアメリカの”Run for Relief”が挙げられる。黒人の青年が震災の被害者のために寄付金を集める目的で被災地であるアトランタからニューヨークまでの往復2500キロを、3ヶ月かけて走破することを宣言。彼はスポンサー探しに苦労していたが、神戸で震災を経験しているノーリツアメリカから快い返事を得ることができた。
当時、彼は黒いフォレストガンプと呼ばれ、その走る様子が米国の大手メディア、CNNやABC、FOX等で大きく報じられ、多くの寄付金を集めることができた。また、家を失った人々のためにノーリツの製品である瞬間湯沸かし器がミシシッピー市のプレハブの家100棟に寄付された。
これは決して大規模な事例ではないが、企業がなにをすべきか?との問いに示唆を与えることができる。企業の社会へのブランドコミットメントは、被災者やコミュニティの人々だけでなく、その企業内の営業部隊や社員達をも鼓舞し、自社ブランドに自信を与えるというポジティブな面がある。

ワイズアンドパートナーズ ブランドマーケティング・ディレクター 結城彩子
(宣伝会議5月1日号に一部寄稿)

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