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米国マーケティングトレンド研究会 2017.03.22

Kawaiiの代名詞キティちゃんのアメリカ進出。 ローカライズ成功の秘密とは?

皆さんご存知の人気キャラクター「キティちゃん」は、2021年の11月に52歳を迎えました。世界では、レディー・ガガやケイティ・ペリーといった影響力のあるセレブリティにも人気があり、2014年の40周年の際には、キティちゃん自身が年間70億ドルの価値をもつセレブリティになったとも言われました。

アメリカでの「キティちゃん」人気

米国ロサンゼルスにあるアートミュージアムMOCAでは、キティちゃんの生誕40周年(2014年11月)に際し、イベントが開かれました。チケットはソールドアウトで、会期4日間で25,000人ものキティちゃんファンが訪れ、ワークショップに参加したり、専門家の話を聞いたりしてイベントを楽しみました。

また、2013年7月には、米国初のキティちゃんカフェのポップアップが、南カリフォルニアのショッピングモールに出展されました。初日の午前11時のオープンに対し、午前7時頃から行列ができ、午後2時にはスイーツやドリンクなど全ての商品がソールドアウト。予定よりも早くお店を閉めるという大盛況ぶりでした。

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キティちゃんの人気の秘密とは?

なぜここまでキティちゃんが人気になるのでしょうか。アメリカのブランディングの専門家、ドーリー・クラークは「彼女は冷静かつ無表情なので、人々はあらゆる感情を彼女に当てはめることができる」と話します。

また、ハーバード大学の日本学の客員教授で、キティちゃんを研究してきたクリスティーン・ヤノ氏は「キティちゃんには大人が子供時代を思い返すような懐かしさがある」と分析します。続けて、「キティちゃんは非常にスマートで、美的に心地良いデザインです。それが人々に、彼女らが望むキティちゃんの表情を考えさせることがでる」と言っています。「キティちゃんというキャラクターの『Kawaii』という部分、つまり日本の「かわいい」という文化が、少女たちを強力なファンへと発展させ、1970年代から80年代にかけての一大勢力に育て上げました」。

キティちゃんには口が描かれていない。だからこそ、人々はキティちゃんに様々な感情を入れることができ、それがキティちゃんの最大の魅力の一つとなっているのです。

キティちゃんは猫ではなかった

さて、キティちゃんの世界の人気について述べてきましたが、普段なかなか知ることのできない、キティちゃんのプロフィールを簡単にご紹介したいと思います。本名はキティ・ホワイト、愛称がキティちゃんやハローキティで、ロンドン郊外で生まれました。身長はリンゴ5つ分、体重はリンゴ3つ分とされています。

そして驚くべきことに、実はキティちゃんは猫ではなかったのです。生みの親であるサンリオでは、キティちゃんの見かけが猫に見えることを認めた上で、彼女を「小さな女の子」として言及しているのでした。この議論はアメリカで物議を醸したトピックで、米紙ロサンゼルス・タイムスでも採り上げられました。現地では、ショックを受けた人も多かったそうで、キティちゃんへの関心の高さが分かります。

キティちゃんの米国進出とローカリゼーション

さて、これまでキティちゃんの海外人気をご紹介してきましたが、ここでは米国での「キティちゃんビジネス」の展開に迫ります。

キティちゃんの米国進出は1976年に遡ります。70年代から90年代には、ニューヨークに1店舗とサンフランシスコに1店舗を作るアプローチで、日本のビジネスモデルを海外にそのまま移転させるやり方でした。

2000年代になって、米国向けの商品を現地で開発し始めました。その後、ローカリゼーションを進めるという目的で、流通網の拡大と並行して積極的に行ったのがライセンス供与を通じたコラボで、ハローキティというブランドと協業先が持っているブランドをマッチングさせて展開するという戦略でした。

例えば、スワロフスキーとコラボしてハローキティの商品を作り、それぞれの流通網を通じてハローキティの商品展開をしていくというアプローチです。このライセンス事業の転換が、マーケットにおけるポジショニングを再構築することに繋がったのです。

また、GMS(総合スーパー)やトイザらスなどの強力な流通網を利用し、チャネルを拡大させていきました。子どもの誕生日の際のパーティーグッズや、ギフト用アイテム、学用品など、幅広い商品を供給した結果、それが海外マーケットでの拡大に寄与することになりました。

その背景には、キティちゃんの生まれながらのコンセプトである「かわいく、仲良く、助け合う」の精神が基本にあり、その日本的なブランド・アイデンティティーが、世界で共感を生む要因となったのです。

米国での成功のカギは「デザインのアジャスト」

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海外のライセンス事業で着目すべき点は、デザインなどに関して、パートナーに大きな裁量権を与えているということにあります。実は、作り手やファンのニーズに合わせて、各マーケットでは独自のデザインを展開していきました。

これは従来のキャラクタービジネスを考える上で、非常に珍しいケースです。なぜなら、国内外の人気キャラクターは、第三者による使用が厳しく規定されているからです。そのような状況の下、形や質感も大きく変えて原型を留めないような状態のキティちゃんを数多く生み出し、既成概念を壊して行きました。

しかし、決してライセンシーに自由に商品を作らせているわけではなく、そのクオリティのチェックには厳しく目を光らせています。数十回のクオリティチェックが行われてから初めて、ライセンス商品の承認がおりる。クオリティ維持のため、ひとつの商品を作り上げるまでに長い時間を必要としているようです。

今や「Kawaii」の代名詞となったキティちゃん。米国での人気の理由は「親しみやすさ」ではないでしょうか。口が描かれていないことで、見ている人が自由に表情を想像ができ、嬉しい時も悲しい時も人々の気持ちに寄り添うことができる。また、海外マーケットの拡大をするための戦略の一つであった「強力な流通網」を利用して、町のスーパーマーケットなどでもキティちゃんの様々な商品を購入ができるようになりました。その上、現地のニーズに合わせたデザインで商品が作られているので、米国の人々にとっての「親しみやすさ」があることも、キティちゃんが愛される理由の一つではないでしょうか。

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参考記事
THE WEEK:Hello Kitty turns 40: how did she become so popular?
USA TODAY: First Hello Kitty Cafe in U.S. is the cat’s meow to fans
Mail online:Everything you need to know about Hello Kitty
nippon.com:キティちゃんを世界のアイドルに育てた男―鳩山玲人・サンリオ常務に聞く
CNET JAPAN:
ハローキティが“異色のコラボ”を続ける理由–サンリオが語る知財管理の難しさ

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