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米国マーケティングトレンド研究会 2020.10.19

リレーションシップ・マーケティング:Lay’s(レイズ)はどうやって顧客との関係性を築いたか?

近年、「自分はブランドに大切にされている」と顧客に感じさせるマーケティング手法をとるブランドが増えてきています。SNSの出現により、顧客はブランドと直接コミュニケーションをとりやすくなり、ブランドからの反応が良くない場合、それに対して批評することも容易になりました。21世紀に入りブランドは、顧客に「重要視されている」と感じてもらうため、最新の注意を払う必要が出てきましたが、このような今まで取られてきた「リレーションシップ・マーケティング」の戦略は、新型コロナウィルスによる「ニューノーマル」と呼ばれる生活の中で、変化の時を迎えています。

リレーションシップ・マーケティングは、「顧客との個人的な相互作用を構築し、維持すること」とQuirks(ミネアポリスに本社を置くマーケティングリサーチメディア)では定義しています。リレーションシップ・マーケティングのポイントは、顧客と個人的で感情的なつながりをつくり、長期的な顧客基盤を確立することです。リレーションシップ・マーケティングでは、新規顧客に1つの商品を販売することに集中するのではなく、ブランド・ロイヤリティがある優良顧客からのフィードバックに応えることで、時間をかけてビジネスを最適化します。

ポストコロナ後のマーケティングの方向性はまだ未知の状態ですが、今後のクリエイティブ戦略の優れたモデルとなりうる素晴らしいリレーションシップ・マーケティングの事例はたくさんあります。

ポテトチップスブランドのレイズは、クラウドソーシングの力を活用して、ミレニアル世代と直接つながりました。PepsiCo(ペプシコ)が所有するレイズは、2012年、”Do Us a Flavor”という、”Do us a favor(頼みたいことがありますという意味)”をもじった、新しいフレーバーを消費者に決定してもらうというキャンペーンを開始しました。ペプシコは以前、2008年に英国で異なるブランドのチップス、「ウォーカーズ」で同様のキャンペーンを行っていました。Lay’sブランドはこの巧妙なタイトル付けにより、18-34歳の人口層の注目を集めることに成功しました。

“Do Us a Flavor “は、社内で新しいフレーバーを開発して一般に公開するのではなく、レイズフレーバーの決定権を顧客に委ねるというキャンペーンでした。SNS、特に2012年に記録的な利用者数に達していたFacebookと提携し、レイズブランドは参加者にユニークな体験を提供しました。Facebook上では、一般的な「いいね!」ボタンの代わりに、レイズの投稿の下に「I’d eat that(これ食べたい)」ボタンが表示され、ユーザーから提案された様々なフレーバーが表示されました。

このキャンペーンには何千もの応募があり、最も人気のあったフレーバーはFacebookページの上部にバナーが表示されました。最終選考に残ったトップ3のフレーバーは実際に製造され、購入することができるようになっていました。また、上位3つのフレーバーから好きなフレーバーを選んだ後は、ページにアクセスして投票するのが簡単な仕様になっていました。

リレーションシップ・マーケティング:Lay’sの最終選考に残ったフレーバー

画像:2012年の”Do Us A Flavor”キャンペーンのファイナリスト3フレーバー。「チーズガーリックブレッド」、「チキン&ワッフル」、「スリラチャ」。

このキャンペーンは、アメリカ中で話題になりました。誰もが投票できるので、多くの人がコンテストの結果に直接的な関わりを感じ、友人間で最終選考まで残った3つのフレーバーをすべて購入し、それぞれの長所と短所を議論するといった社会現象も生まれました。

最初の”Do Us a Flavor”キャンペーンでは、380万件の新フレーバーの応募があり、当初の目標であった120万件の3倍以上の応募がありました1。当初の予想では、前年比3%の売上増を見込んでいましたが、キャンペーンでは実際には12%の売上増となりました。初回キャンペーンが大成功したため、ペプシコは2017年までの5年間、同じキャンペーンを開催しました。5年間の間には、2つのジャガイモの形をしたパペットのキャラクターが、投票されたフレーバーのレビューをオンライン上で行うなど、毎年新しい要素が追加されました。

リレーションシップ・マーケティングを意図して開始されたキャンペーンではありましたが、その影響は当事者の思惑を超えて広まっていきました。自分で選択したフレーバーを自由に作成できたため、何人かのユーザーは、「ジム用の靴下」や「うつ病」のような通常思いもつかないようなフレーバーをふざけて投稿したため、”Do Us A Flavor “キャンペーンはオンラインミーム(SNSなどで人を介して広まっていく流行りの行動)化し、レイズの18歳から34歳のミレニアル世代での人気を確固たるものにしました。これは、このターゲット層での販売拡大を目指していた Lay’s にとっては大変喜ばしいことでした。

リレーションシップ・マーケティング:Lay’sのイタズラとして作成された投稿

画像:インターネット上のイタズラとして作成された投稿。多くのインターネットユーザーが、”Do Us a Flavor”キャンペーンでレイズのパロディフレーバーを作成した。

しかし、すべての特別フレーバーが長期間に渡って好調に推移したわけではなく、一部の国では売上が急速に増加し、その後急速に減少したため、レイズのブランドではなく単にコンテストの目新しさが注目されただけだ、と指摘する人もいました。にもかかわらず、このコンテストが5年連続で行われたという事実は非常に印象的です。

さらに、このキャンペーンを通じてレイズが実現したすばらしいことは、顧客および潜在顧客の心理に直接コンタクトを取れたということです。クラウドソーシングは巨大なフォーカスグループインタビュー調査のような力を発揮し、SNSの力を借りることで、製品テストやアイデア創出のフェーズを短縮することができました。実際にレイズは新フレーバーのリリースにかかる時間を大幅に縮め、1年以内に新ブランドを市場に投入することができました。

顧客と直接コミュニケーションをとり、顧客の要望に耳を傾けることで、レイズはリレーションシップ・マーケティングの強者 としての地位を確固たるものにすることができました。現在でも、人々は様々な味の組み合わせについて冗談を言い合い、過去の受賞フレーバーについて話題にします。

レイズの例は、特にソーシャルディスタンスが必要となっている現在、リレーションシップ・マーケティングの可能性について多くのことを教えてくれます。このキャンペーンには、新しいフレーバーを試すために人々が集まる、という要素があったのは間違いありませんが、フレーバー体験をパーソナライズする、という点が最も重要ポイントでしょう。顧客は自分たちがレイズの方向性や将来の決定に影響力を持っていると感じ、ブランドに関心を寄せ、購入したのです。

ポストコロナの市場で生き残るためには、ブランドは顧客との個別の関係を深める方法を見つけなければならず、 ユーザーに新製品の決定を直接知らせるプラットフォームを提供するという手法は、大変有用な手段といえるでしょう。

Crowdsourcing Your Next Chip Flavor: Lay’s “Do Us A Flavor” Campaign

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